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マーダラーズミュージアム

​作:声劇団LutM

 

登場人物

・神崎 いおり(かんざき いおり):ごく普通の人間。

・篠山 あやめ(しのやま あやめ):ごく普通の人間。

・滝川 諒太(たきがわ りょうた):ごく普通の人間。

・桜間 斎(さくらま いつき):ごく普通の人間。

   全員26歳。

・GM:館内アナウンスを通して、デスゲームを促すゲームマスター

・君島 優斗(きみじま ゆうと):死体

 

あらすじ

目が覚めると真っ白な立方体の部屋に閉じ込められていた神崎・篠山・滝川・桜間の4人。

ただひとつ、部屋の真ん中には、真っ赤な血を流した仰向けの死体がひとつ――。やがて館

内アナウンスが流れる。「私の美術館へようこそ。当館唯一の美術品をどうぞ心ゆくまでお

楽しみください。ちなみに、その作品をお創りなった作家様は、あなた方4人のうちのお1人です――」。

 

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あやめ:……きて、いおり、起きて!

いおり:う、ううん……。あれ……あやめ?

あやめ:よかった!ねぇ!いおりも目が覚めたよ!

いおり:え?

諒太:おお、いおり!よかったぜ!

斎:いつまでも目覚めないから……心配したよ。

いおり:お前ら!諒太と斎じゃん!?スゲー久しぶり!成人式以来!?元気してた?

あやめ:うん、まぁ。……あたしたちは元気、だけど。

いおり:あれ?なんかみんなテンション低くない?つか、ここどこ?

諒太:それが分かれば苦労しねぇよ。

いおり:へ?

斎:僕たち、そうそう再会を喜べない状況にいるみたいだよ。

いおり:相変わらず斎は言い方がくどいな~。バカの俺にもわかるよう説明ヨロ~!

あやめ:……嫌でもわかるよ。

いおり:なんなんだよみんなさっきから……。あ、もしかして俺、ドッキリしかけられてる?

諒太:そうだったらマシだったんだけどな。――見ろよ。

いおり:諒太もマジな顔しちゃって、なになに~?――は、何あれ。

あやめ:みればわかるでしょ!……し、死体よ。

いおり:は?したいぃ!?そ、そんなん、こんなところにあるわけね―じゃん!偽物だろ?もっと近づいて見てみれば……。

あやめ:ちょっと、いおりやめなよ!

GM:おーっとお客様!美術品にはお手を触れないようにお願い致します!

いおり:どえっ!?誰だ!?

GM:ですからお客様、美術品にはお手を触れないようにと申し上げたのですよ。

諒太:てめぇは誰だって言ってるんだよ!姿を見せやがれ!

GM:私ですか?私はこの美術館の館⾧です。姿は……ふふふ、秘密です。ミステリアスでいいでしょう?

斎:美術館、だって?

GM:ええ、ここは私の自慢の美術館、「マーダラーズミュージアム」!……とはいっても、作品はそこにあるひとつしかないんですけどね。

あやめ:作品……?て、まさか。

諒太:この死体が、美術品だって言うのかよ!?

GM:はい。死体であり、それは唯一無二の作品です。タイトルは「殺人」。ね、素敵でしょう?

諒太:てめぇ……頭わいてんのか!?

あやめ:まって、「殺人」……!?

斎:!?そう言うことか!

いおり:え、なに、ふたりとも。

斎:この作品のタイトルが「殺人」。ということは……この死体は誰かに「殺されてる」んだ。

諒太:何――!?

GM:だいせーいかい!さすが、斎さんはいつでも頭の回転が早いですね!

斎:はっ!?どうして僕の名前を知っているんだ!?

GM:――知っていますとも!桜間斎、滝川諒太、篠山あやめ、神崎いおり……。私はみなさま全員のことはよ~く存じ上げておりますよ。――たとえあなた方が私を存じ上げてなくてもね。ふふふ。

いおり:お前、俺たちとどっかで会ってるのか!?

GM:……さてね。いつかあなた方が私の正体に気づくことが出来たら、その時は教えて差し上げてもいいかもしれないしそんなことないかも。……さぁ、このやりとりにも飽きましたので、とっても優しいこの私から状況説明させて頂きますよ。改めまして私の美術館へようこそ!あなた方が閉じこめられているこの場所には、入り口も出口もございません!当館唯一の作品を心行くまでお楽しみください!

いおり:入り口も出口もない……!?閉じ込められてるってこと!?なんで!

諒太:ふざけんじゃねぇ!

GM:……ちなみに、その作品をお創りなった作家様は、あなた方4人のうちのお1人です。

斎:!?……まさか。

いおり:は?どゆこと?

GM:つまり、「その人を殺したのはあなた方のうち1人」ってことですよ。おわかりですか?

諒太:俺たちのうちの1人が――殺した!?ふざけんな!俺たちがそんなことするわけねぇだろ!!

GM:そう思うなら皆様、ご自分のポケットの中を見てみてください。

4人:……!?

斎:け、拳銃だ……!

いおり:うそだろ……これマジもん……!?

GM:偽物だと思うならどうぞ撃ってみてください?あ、作品を撃つことだけはやめてくださいね。器物破損でそれなりの額を請求させて頂きます。

斎:……死体に見られる致命傷もどうやら弾丸の痕。……もしかして本当に……?

諒太:お、おいやめろよ斎!質の悪い冗談に決まってる!

GM:私は冗談なんて言っていないんですけどねぇ。……だからこそ、もしかしたら、その作品をお創りになった方ご本人が「口封じに」新たな作品を作らないとも限らないですが。

あやめ:……そんな。

GM:さてさて言いたいことは言いましたので、私はこれにて失礼しますよ!それでは皆様、どうぞごゆっくりお過ごしください!

諒太:お、おい!待て!!

斎:クソッ……もう声が聞こえないな。

いおり:畜生!どうなってんだよ……!!

あやめ:どうしよう……。


 

いおり:おーい、諒太!そっちどうだ?

諒太:ダメだ、抜け穴どころか隙間風すら感じられねぇ。本当にこの空間は完全な密室みてぇだな……。

斎:それはおかしい。俺たちをここへ運んできたなら、必ずどこかに出入口があるはずだ。

いおり:あ~つかれた。おい!あやめもいつまでもぼーっと座ってないで、手伝えよ!

あやめ:……ねぇ。あのさ。

いおり:あん?なんだよ。

あやめ:あの死体……よく見れてないから確信ないんだけどさ……「君島」じゃなかった…

…?

諒太:君島……?

斎:僕は覚えがないな。君の知り合いか?

あやめ:……そうだよね!やっぱそうだよね!あはは、ちがうよね!ごめん、何でもない……。出口探すの手伝うわ。

斎:いや……君はなんだか疲れているようだ。休んでいてもいいよ。

いおり:でたでた斎のエセレディーファースト~!あやめはさっきまで座ってただけじゃねぇか。

斎:昔と変わらず無神経だな君は。僕は体力面でなく精神面の疲弊のことを言ってるんだ。無理はするなよ、あやめ。

あやめ:うん。……でも大丈夫。黙ってると、色々ぐちゃぐちゃ考えそうになっちゃうからさ。

諒太:さっきの変なアナウンスが言ってたことか。あんなもん気にすんなよ。

あやめ:そうだよね。――気にするだけ、無駄だよね。

いおり:だいたい俺らフツーの人間だぜ?そりゃー普段生きてりゃ、ぶっ殺したいほどうぜ~ヤツとかはいるけどよぉ、だからってマジで殺しはしねーだろ?

あやめ:あぁ、あるよね!そう、でも実際に殺したりなんかしないもん。

諒太:そんなもん当たり前だろ。

斎:同意だな。

いおり:あの死体だっていくらでも考えようがあるぜ?あそこであの場所で殺されたっぽい感じになってるけど、実は俺たちと一緒に運び込まれてきててさ、さっきのアナウンスがそれっぽ~い嘘ついてるとか。だろ?

斎:ふっ、さすがいおり。こういう時の頭の回転の早さは昔から変わらないな。

あやめ:――!

諒太:ああ、お前は昔っから悪知恵の働く奴だったもんな。

いおり:「悪」は余計だっつーの!あーなんかお前らといると、学生時代に戻った気分になるぜ!懐かしいなぁ。

斎:こんなタイミングで話す事じゃないかもしれないけど、たまたま同じ高校で、同じ部活にいたってだけでこんなに⾧く続く間柄だとは思わなかったよ。

いおり:あ~!こんなところで会ってなきゃ一杯飲みに行きたいところだよな!

あやめ:……あのさ!

いおり:うぉっ、なんだよいきなり大声出して。

あやめ:やっぱりあんたたち、おぼえてないの……?「君島」のこと。

いおり:だから覚えてねーって!誰だよ君島って!

斎:お前だけの知り合いじゃなかったのか?

あやめ:あんたたちだけ覚えてないのおかしいって!……もしかして、3人そろってあたしのことハメようとしてるんじゃ……。

諒太:おいおい落ち着けよ、なんでそうなるんだ!?

あやめ:だって……だってあたしたち、君島のこと……いじめてたじゃん。

3人:!!

いおり:……あれ、えーと、そうだっけ……?

あやめ:そうだよ!おんなじ部活にいた「君島優斗」 !目立たなくて地味だからって。あたし達、あいつのことい、いじめてた、じゃん……。

諒太:……そんな奴、いたような、気がしないでもない……。

斎:僕もはっきり顔までは思い出せないな……。それに、僕はいじめをしたつもりは一切な

いね。

あやめ:い、斎だって!わざと重い荷物を部室まで運ばせた、って笑ってたことあったよ!アタシは覚えてるからね!!

斎:な、そんな……。覚えてない……。

あやめ:諒太だって、気に食わないことがあったら君島を殴ったりしてたよ!?

諒太:んな……なんでそんなにお前だけ鮮明に覚えてんだよ!

あやめ:むしろなんであんたたちそんなにすっかり忘れてんの!?あたしも君島のこと、い

じめてたから覚えてるってだけ……!

いおり:おちつけあやめ!どうどう、こういう時こそ、冷静になれって。例えあの死体が君島だったとしよう。だから何だというのだね?

あやめ:え……。

いおり:奴は死んでるってことだろ?じゃあ今の俺たちには何の関係もないことじゃねぇか。死人に口なしっていうだろ?俺たちがたとえ奴をいじめてたとしても、それを語る口はもうどこにもない。OK?

あやめ:そ、そうだけど……。君島の友達とかが、仕組んだことだったり……?でも、いじめられてた君島に友達なんて、いなかったはず……。

いおり:なんにせよ、この状況にたまたま居合わせた死体が君島だっただけで、それと俺たちが君島をいじめてたことは話が別ってこった、わかる?

あやめ:うん……。

いおり:だったら気に病むだけ無駄だぜ!心配すんなって。早いとここのくだらない空間から抜け出して、飲みに行こうぜ?な?

あやめ:うん……うん……!

諒太・斎:……。


 

いおり:ダメだ~~!どこ探しても出口がねぇ!なぁみんな、ちょっと休憩しようぜ!!

あやめ:うん。

諒太:わかった。

斎:……ああ。

いおり:ふひぃ~疲れた!

斎:……なぁ、ここで一つ、仮説を立ててもいいか?

あやめ:仮説?

斎:さっきのアナウンスは「ここには入り口も出口もない」と言っていたが……この「作品」を作った張本人、つまり、君島を殺した人物なら、僕たちをここに連れ込んだ経路がわかるんじゃないか?

諒太:お、おまえ!それはあのいかれたアナウンスの言葉を信じるっていうことか!?

斎:だからあくまで仮説だと言っただろ?「もしこの4人の中に、君島を殺した人物がいるのなら、そいつを暴いて脅して外まで連れ出させる」……。合理的なアイディアだと思わないか?

諒太:仮説にしたって度が過ぎてるだろ!俺たちの中に殺人犯がいるってのかよ!!

斎:いっ……!放せ諒太!大体、お前は昔から乱暴なところが――。

いおり:お、おい落ち着けって!ーー斎、急にどうしたんだよ?さっき「俺たちの誰かが殺したことにはならない」って話したばっかりじゃんか?

斎:いや……さっきのあやめの話を聞いて思ったのさ。「僕は自分の記憶が信じられない」

って。

いおり:君島のいじめのこと、覚えてなかったって話か?そんなの何年も前の話だぞ?当たり前じゃねぇか!

斎:そして記憶が信じられないのはお前たち……3人もだ。

あやめ:えっ……。

斎:君島の話どころか、僕はここに運び込まれる以前のことすら覚えてないんだ。――お前らはどうなんだ。

諒太:そんなの――俺たちだって覚えてねぇよ。

斎:それが信用にあたらない、といってるまでだ。お前たちだって、僕を疑ったっておかしくないんだぞ。

諒太:それは……。

斎:僕たちはよくわからないが記憶が曖昧なんだ。だから、あのアナウンスが言っていた、「この4人の中にあの死体を創った人間ーーつまり君島を殺した人間がいる」というのは本当かもしれない……と思っておいた方が、僕はいいと思う。

あやめ:じゃあ……誰かが嘘をついてるってこと……?

いおり:おいおい斎ちゃん冗談でしょ?俺たち高校の頃からの親友同士よ?それが裏切ってこんなことするなんてそんなわけないっしょ。

斎:いおり、飄々としているけれど、僕はもう君のことも疑っているんだからな。

いおり:……マジ?

斎:むしろ、どうしてそんなにこの状況を軽く考えていられるのか不思議で不安になる。今はお前の軽口が、僕は恐ろしいよ。

いおり:別に俺は、軽く考えてなんかねーよ!ただみんなで出ることしか考えてねーって、だけで……。

4人:……。

諒太:くそっ、この状況、あのアナウンスの思うツボな気がするぜ。

いおり:どういうことよ?

諒太:俺たちを疑心暗⿁にして、仲違いでもさせようってんじゃねーかって俺は思ってる。

あやめ:でも、この状況だとさ……、そうなる、よね。どうしても。

いおり:おいおいみんな落ち着けって!それがあのよくわかんねーアナウンスの言うことな

らなおさらだろ!?ここで俺たちが結束しねーでどうするよ?

斎:でも、一方で、もしかしたら「殺されるかもしれない」可能性もあるんだぞ。僕たちは全員、拳銃を持ってるんだ。――油断させて一発脳天を打ち抜くことだってできる。そんなこと考えてないか?なぁ、いおり。

諒太:斎!いい加減にしろ!  

斎:……悪いね。僕は、自分自身のことを何も覚えていないという時点で、君たちのことももう信用できなくなってしまったんだ。――おかしいよな。僕だってこんなことしたくないし、言いたくもない。でも、僕はもうずっと、君たちを疑うことしかできないだろう。……だ、だから(呼吸が荒くなり、銃をこめかみにあてる)。

いおり:……お、おいおいおい斎!?冗談よせよ、ロシアンルーレットじゃねーんだぞ!

諒太:斎、正気かよ!やめろ!

斎:どうせ親友を疑い続けることしかできないぐらいなら、そして自分自身も、疑われたまま殺されるぐらいなら、僕は、僕は――!うううううううう!!

諒太:やめろーーーーーー!!


 

GM:おや、作品が一つ増えていますね?どなたがお創りになったんですか?

諒太:……ふざけんじゃねぇよ。どうせ全部見てんだろうが。

GM:ご明察!いやぁ作品のタイトルは「自殺」?いやこれでは安直すぎますかね?「猜疑心」?いやそれとも「仲間想い」?……いや、「面子」ですかねぇ。

諒太:ごちゃごちゃとうるせぇんだよ!!!失せろ!!

GM:おお怖い怖い。それでは作品も増えたところで、皆様素敵な鑑賞タイムをお過ごしく

ださい!

あやめ:ううう……!ひっく。

諒太:斎……死ぬ必要なんかなかったんだぞ……!

あやめ:もう、もうわかんない!あたし、もうどうすればいいの!?ここから出られもしない、斎も死んじゃった。あたし、あたしは……!?

いおり:あやめ、落ち着けって――のは無理かもしんねぇ、けど……。……お前が泣いてたら、俺までおちつかねーよ……。

あやめ:やっぱりこれは、君島の復讐なんだよ……!あたしたちを精神的に追い詰めて、殺そうとしてるんだ!

いおり:だから、その君島は死んでるだろ?それはお前の妄想だって!な?

あやめ:だって斎も言ってたでしょ……!?あたしたち何も覚えてないんだよ?妄想かどうかも分かんないじゃん……!もうやだぁ……!

諒太:駄目だ、完全にパニックになってやがる。

あやめ:ていうか、なんであんたたちそんなに冷静なの!?……!!まさか、犯人はあんたたちのどっちかなんじゃ――!

諒太:おい、勘違いするな!俺たちだってもうわけが分からねぇのをこらえて平静を保ってんだ。全員がパニックになったらそれこそ危険だろ!?

あやめ:じゃあ、その手に持ってる拳銃、棄ててよ。

諒太:……!

あやめ:あたしずっと見てたんだからね。一番冷静を保ってる様に見えて、あんたがずっと

拳銃を手に握ったままなの。

諒太:これは、もしものため、と思って……。

あやめ:もしものためって何さ。やっぱりあんたもあたしたちの誰かを疑ってるんじゃん!

諒太:そ、そうとは限らねぇだろ!もしかしたらこの状況であのアナウンスの野郎が危害を加えてくるかもしれねぇだろ!お、俺はそれに備えてただけで……!

GM:それでしたらご安心ください!私は皆様を見守るだけで、皆様に危害を加えることは

ありませんので!

いおり:うわっ!ビックリした!

GM:ですから安心して良いですよ!諒太さん。

諒太:うるせぇ!信用できるか!

GM:はぁ、私ずーっと本当のことしか言っていないんですけどねぇ?私はあくまでアナウンス。皆様に手を下すことはできないんですってば!……でも流石にそこまで言われるとムカムカしてきちゃいますねぇ?しかし私は皆様に手を出すことはできないし、困りましたねぇ。……そうだ、特別ヒントを差し上げちゃいましょう!

いおり:ヒント?

GM:もちろんここから出るためのヒントです。

いおり:マジかよ!神様、天の声様アナウンス様!お願いします!

GM:もぉ仕方ありませんねぇ、しょうがないですねぇ。ただし条件があります。

あやめ:条件?

GM:どうにかして「諒太さん」が死ぬことです。

3人:!?

諒太:な……!

GM:だってずーっと私に敵意剥き出しなんですもん。流石の寛大な私もイラついちゃいますよね?諒太さんがいなくなってくれたら、ここから無事に出られるヒントを差し上げても良いですよ?

諒太:ふ、ふざけんなよ!

GM:諒太さん、あなたが犠牲になるだけで、大切なお友達2人が助かるかもしれないんですよ?安いものですよねぇ!だって皆様「親友」なんですもの!

あやめ:う、ううう……!

諒太:腐ってやがる……!

GM:まぁ皆様が仲良くそちらで老衰すると言うのなら止めはしませんがね!では皆様、健闘を祈っておりますよ!

3人:……。

いおり:りょ、諒太……。

あやめ:あ、あんたが、あのアナウンスに余計なこと言うから……!

諒太:俺のせいかよ!お前ら、あのアナウンスを信じるのか!?俺がいなくなったって、本当にここから出られるのかわからねぇんだぞ!

あやめ:それは、そう、だけど……。

いおり:……。諒太。自分でやるか?それとも、

諒太:ーーは!?いおり!?

いおり:悪りぃんだけどさ、やっぱ……俺、外出たいんだわ。……あやめと一緒に。

諒太:……あぁ、おめーら、そう言うことかよ。

あやめ:いおり!

諒太:は、はははは!何が「親友」だよ!ーー失望したぜ。無事に脱出して飲みに行きたいとか考えてた俺がバカみてぇだよ。おめーらなんかに殺されるぐらいなら、自分でやる。じゃあな。クソ野郎ども。


 

GM:いやぁ口うるさい諒太さんがいなくなって清々しました!おふたりともありがとうございます!

いおり:なぁ、ここから出るヒントを教えてくれんだろ?教えてくれよ!

GM:そう焦らないでくださいよ。最後に、この質問に答えられたら、ヒントを教えて差し上げましょう!

あやめ:まだ何かあるの……!?

GM:ジャジャン、クエスチョン!「あやめさんの本当に好きな人は誰でしょう?」

いおり:……は!?

あやめ:な、何?どう言うこと!?

GM:あやめさんが真に大切に想う人……その人の名前を明かしてくれたら、ここから出るヒントを差し上げて……いやむしろ、ここから出して差し上げてもいい。

あやめ:どういうこと?あたしの恋人はいおりだけ……。

いおり:……おい、どういうことなんだよあやめ。

あやめ:い、いおり!?

GM:さぁ波乱の予感ですねぇ?果たして、2人揃って出られるんでしょうか?それではまたお会いしましょう!エンジョイ!

あやめ:待ってよ!適当なこと言わないで!あたしが好きなのはいおりだけだってば!

いおり:どうやらそうじゃねぇって、あいつが言ってるぜ。

あやめ:嘘でしょ、私の言葉より、あの声を信じるの!?

いおり:俺だって疑いたくねぇよ!お前とは高校時代からの付き合いだからな!でも……お

前が俺を裏切ってる可能性だって、なくはないだろ。――誰だよ?斎が死んだ時、メチャクチャ泣いてたもんな?斎か?それとも諒太か?

あやめ:なんでそうなるの!?友達が死んだんだよ!?悲しいに決まってるじゃん!?なんでいおりはずっとそんなに冷静で……。――!!まさか、君島を殺したのって……!

いおり:はぁ!?俺じゃねぇよ!そもそも君島なんか覚えてもいねぇって言っただろ!記憶にねぇ奴のことなんか誰が殺すかよ!

あやめ:もうあんたなんか信用できない!……あんたに殺されるぐらいなら……!

いおり:……!おい、俺を殺すつもりかよ!……あぁ、わかったぜ。お前が俺としてたのは「恋人ごっこ」でしかなかったってわけだな!

あやめ:違うって言ってるのに信じてくれないじゃん!もうあんたなんか嫌い!殺される前に殺してやる!!

いおり:やめろ!俺だって撃つぞ!なんもしてないのに殺されてたまるか!

あやめ:やめて……!やめてよ!!銃おろしてよ!お願いだから!

いおり:う、うるせぇ!俺のこと騙してた、クズ女が!!

あやめ:やだああああああ!!!


 

いおり:はぁ、はぁ、は……。あやめのやつ、変なとこ、掠めやがって……。

GM:おやおや?2人で出るんじゃなかったんですか?

いおり:うるせぇ……あんな裏切り者の女と一緒に出られるかよ……。おい!いいかげんこ

こから出してくれよ!怪我したんだ!このままだと死んじまう!!

GM:うふふふ……あははははは!

いおり:悠⾧に笑ってんじゃねぇ!早く外に……!

GM:いや~、君たちは昔からいつもそうだったね。自己中心的で、傍若無人で、利己的で。

いおり:――!!

GM:さっきの質問の答えを教えてあげるよ!あやめが好きなのは「神崎いおり」。君だけだったんだよ。

いおり:は……?

GM:よっ……と。

いおり:死体の真下に、穴があったのか……!?お前、まさか……!

君島:この死体は、よーく見ればわかるけど精巧にできた偽物。最初に言った「この4人のうち誰かが殺した」ってのは嘘さ。君たちを惑わすためのね。君が見破った時はどうしようかと思ったけど、やっぱりクズは集まってもクズだったね。――そう。僕は君島優斗。高校時代、君たちにこっぴどくいじめられて人生を壊された、あの君島優斗だよ。もっとも、あやめ以外は覚えてすらいなかったわけだけどね。

いおり:……!

君島:君はやっぱり最後まで生き残ると思っていたよ。一番執拗に僕のことを痛ぶってくれたからね。それぐらいのクズだってことは知ってたからさ。――ふふっ!何が「親友」だよ!!あはははは!クズどもの絆なんて、やっぱりこんなもんなんだ!充分楽しませて貰ったよ!これで僕が君にトドメを刺せば、僕の最高の殺人⿁美術館――「マーダラーズミュージアム」の完成だ!

いおり:クソ野郎が!!クズはどっちだよ!俺たちは確かにお前をいじめてたかもしれねぇけど、こんな風に……殺したりはしなかっただろ!!殺人⿁はお前だろ!

君島:あははははは!もちろんそれもそうだよ!僕は結果として君のオトモダチ3人を殺したし、君のことも殺す。確かに殺人⿁かもね?――でも言ったでしょ?ここは「殺人⿁美術館」だって。

いおり:は……?

君島:いわゆる殺人⿁だけの美術館。……僕をこんな風にしたのは……、僕を「殺した」のは、おまえたちだ。

(入れられたら銃声)


 

おしまい

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