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『ずっと ⾬だった。』

作:声劇団LutM

登場⼈物

・⾼坂 真也(こうさか しんや)

・是川 充(これかわ みつる)

・間宮 皐⽉(まみや さつき)

・皐⽉の友達A

・皐⽉の友達B

 

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シーン1

 

真也、充、皐⽉、3⼈の酔った笑い声。

 

真也︓――でさぁ、先輩がマジで無茶振りしてきて︕マジでアレはなかったわ〜︕

充 ︓うわ、マジで有り得ねーな︕クソじゃん。クソオブクソ。

真也︓そうなんだよ、マジクソ。

皐⽉︓ちょっと⽌めな︕︖⼈がつまみ⾷べてるんだからさー︕

真也︓わーりわりぃ。ともかくよぉ〜今⽇のこの宅飲みのことでも考えてなかったらやってらんなかったっ つーかさ。

充 ︓つーかいつもやってんじゃん︕俺らほぼ毎⽇飲んでるじゃねーか。

皐⽉︓まぁ実際、飲まなきゃやってらんない時もあるよね〜。

真也︓皐⽉も充もやっぱ⾊々あるだろ︖はー、やっぱこの3⼈の時間がねーと俺マジ無理。

充 ︓真也んち居⼼地いいしなぁ。さらに駅近だし︖コンビニも近いし︖ あそこの店員サンめっちゃ可愛いし。

真也︓最後のはお前だけが得してるやつじゃん。

充 ︓おやおや〜︖真也クンはあの可愛い⼦に興味がないのかね︖⼀体誰に興味があるというのかな〜︖

真也︓ばっかおま、皐⽉の前でそんなこと⾔うなよ︕ 1

皐⽉︓︖なんか⾔った︖

真也︓い、いやこっちの話︕ふっざけんなよ充︕

充 ︓誰かさんがじれったいもんでつい、な︕まぁ応援してるぜ︕がはは︕

真也︓ったくよぉ。

皐⽉︓……充は今⽇も元気だね。

真也︓元気すぎるっつーの。少しは黙ってみろっつて。

充 ︓俺が黙ったら世界が終わるぜ︕︖それでもいいのか︕︖

真也︓世界が終わる前に壁ドンが来て俺が社会的に終わるんだよ︕

充 ︓そりゃ失礼いたしましたァー︕

真也︓うわ腹⽴つ︕

皐⽉︓あははは︕ていうか壁ドンなら何回もくらってるじゃん。

真也︓そうなんだよなー。でもなんか最近はなくなったんだよ。隣引っ越したんかな︖

充 ︓ふっ、俺の勝ちだな。

真也︓勝ち誇んなよ。うぜーな。

皐⽉︓でもよかったじゃん、社会的に終わらなくて。

真也︓それもそうな。

皐⽉︓さーて、千⿃⾜になる前に私は帰るわ。

真也︓もう帰んの︖

充 ︓どうせ明⽇も飲むべや。

真也︓それもそっか。

皐⽉︓そんじゃ、また明⽇ねー︕

真也︓おう︕あ、傘持ってるか︖

皐⽉︓ううん、ないけど駅まで⾛るから⼤丈夫︕ありがとう︕

 

 

シーン2

 

真也︓うひゃー、⾬ヤバいな。めっちゃ濡れてる。

充 ︓……。

真也︓……どうしたんだよ。最近お前なんか静かだな︖

充 ︓別にそんなことないだろ。

真也︓いやいや、俺とだと全然しゃべってくれないじゃん……やっぱ皐⽉いないと寂しいのか︖

充 ︓寂しいのはお前だろ︖

真也︓ッチ、ぅっせーな……(タバコくわえて)お⾒通しかよ (タバコに⽕をつける)

真也︓俺さ、今が⼀番幸せかもしんねぇ。お前と皐⽉と3⼈⼀緒の時間もめっちゃ⼤切なんだけどさ。

   なんつうの、皐⽉がいなくなったあと、お前とこうしんみりする時間も含めてさ。

   俺にとっちゃ……かなり特別で、このままが永遠に続けばいいなって思うんだよな。

   この先の進路によっちゃそれも叶わないかもしれないけどさ……。

   そう考えると……正直⼼臓がキュッとするっつーか、参っちまいそうになるんだけど。

   でもさ、なんだかんだ俺たち3⼈ってずっと⼀緒な気がするんだよな︕これからも。

   腐れ縁っつーの︖俺にとっちゃお前らって「当たり前」の存在で。

   それをめっちゃ嬉しく思うよ。……うん。だから充、これからも……って、寝ちまったのか︖

   ったく、相当酔ってたもんな……相変わらず調⼦のいいヤツ。

   ……⾬、⽌まねぇな。――俺も寝るかぁ。

​​

シーン3

友達A︓やっほー皐⽉、このあと暇〜︖

友達B︓授業終わったら飯⾏こっかなって話してたんだけどさ。

皐⽉︓ごめん、今⽇もちょっと⽤事があってさ……。

友達A︓⽤事……って、まさか、例の「宅飲み」︖

皐⽉︓……そうだけど。

友達B︓げ、皐⽉ってまだ真也と宅飲みしてるわけ︖なんで︖

皐⽉︓なんで、って……それは……。

友達A︓真也ってあれでしょ︖充が死んでから頭おかしくなったヤツ。

友達B︓そうそう、独り⾔ブツブツ⾔っててさ。⼤学にも来ないし。

友達A︓完全にヤバいって。⾏くのやめなよ皐⽉。

皐⽉︓でも、なんていうか、放っておけない、のかな。1⼈にする⽅が怖いっていうか。

友達A︓え、マジ︖

友達B︓ちなみになんだけど……あいつのこと好きとか︖

皐⽉︓ち、違うよ︕付き合いが⻑いだけ︕

友達A︓付き合ってもないのにそこまでするとか、ちょっとないわ。

友達B︓ていうかさ、死んだ充だっけ︖の⽅も⾊々ヤバいんじゃなかったっけ。

友達A︓あーそうそう、カテーカンキョーつうの︖ヤバくて。練炭で⼼中したんよ。

友達B︓うっわえぐっ。

友達A︓ねー悪いこと⾔わないからさぁ、真也とつるむのやめなって。皐⽉まで頭おかしくなるよ。

皐⽉︓……クセに。

友達B︓え︖

皐⽉︓何にも知らないくせに……なんにもしらないくせに︕︕

友達A︓ちょっと、皐⽉︕――⾏っちゃった。

友達B︓……うちらも縁切ったほうがいいんかな︖

友達A︓そうする︖

 

 

シーン4

 

皐⽉︓充︕

充 ︓よ、皐⽉。急に呼び出して悪かったな。

皐⽉︓ううん別に。特に⽤事もなかったし。真也は︖

充 ︓……真也は呼んでない。

皐⽉︓そうなんだ。珍しいね。

充 ︓……実はさ、お前に折り⼊って……頼みがあるんだ。

皐⽉︓へ︖

充 ︓これから先、真也のこと、⽀えてやってくれないか。

皐⽉︓え、なに︖急にどうしたの︖⽀えてやってって、どうゆうこと︖

充 ︓ほら、あいつ、昔っから泣き⾍だしさ。だから……お前の⽀えが必要だと思ってさ。

皐⽉︓それは充も同じじゃん︕充あっての真也みたいなところあるし。

充 ︓ははは……そーなんだよな……。

皐⽉︓……充︖

充 ︓……⾬降りそうだな。先帰るわ。とりあえず、頼んだぜ。 

皐⽉︓⾬……︖

充 ︓あ、そうだ。……俺、お前のこと好きだったわ。

皐⽉︓へっ︕︖

充 ︓ごめん。じゃあな。

皐⽉︓みつ、る……︖

 

 

シーン5

皐⽉︓はぁ、はぁっ……。

真也︓︕︖皐⽉︕︖どうしたんだよ、びしょぬれじゃんか︕傘ささずに来たのか︖

皐⽉︓傘なんかいらないよ。⾬、降ってないもん。

真也︓は︖じゃあなんでそんなに濡れて……。あ︕充タオル頼むわ︕

皐⽉︓待ってよ︕

真也︓なんだよ、早くしないと⾵邪ひいちゃうだろ︕

皐⽉︓違う︕――⾬なんか降ってない︕︕いい加減にしようよ……充はもういないの︕︕

真也︓……は︖

皐⽉︓充は︕もう死んだの︕もう、傍にいないんだよ……︕

真也︓何⾔ってんだよ、皐⽉。そんなこと充の⽬の前で⾔うなよな。今だって3⼈揃ってるじゃんか、なぁ︖ ……ほら。

皐⽉︓私だって受け⼊れたくなかった︕だからあんたの空想の中に充がいるって分かったときはそれでもい いと思った。私も3⼈のままでいられると思ってた。でももう、終わりにしなきゃいけないんだと思う ……。私には、充の声は聞こえないから……。

真也︓俺の中の、充︖ 

皐⽉︓私が煮え切らないまま、変にあんたの空想に付き合ってたから、たぶん、真也の中の充が⼤きくなっ ちゃったのかもしれない。それに関しては……私のせいだと思う。謝る。

真也︓何を、⾔って……。

皐⽉︓でも、もう終わらせなきゃいけない。私は充と約束したから……あんたを⽀えるって。だから。

真也︓何⾔ってんだよ︖充はいるだろ︕︖ここにいるだろ︕︖もういないとか、わけのわからないこと⾔うなよ︕︕充はいるし、⾬はずっと降りっぱなしだし、充が、⾬が。

皐⽉︓⾬なんか降ってない。泣いてるんだよ︕私も、あんたも︕︕

真也︓︕

皐⽉︓⾬なんか、ずっと降ってない。私達を濡らしてるのは、涙なんだよ……︕

真也︓……。

皐⽉︓本当は、⼼の底では、わかってるんでしょ。充がもういないこと……。

真也︓みつ、る。もう、いない……︖

皐⽉︓……。

真也︓だって、昨⽇だって、俺は充と話してた……。⼀緒に酒も、飲んで……。――あれ、充……︖ どこ⾏ったんだよ︖充︕︖おい︕充︕さっきまでここにいたのに、いたのに︕

皐⽉︓真也︕だから――︕……いないんだよ、充は︕死んじゃったの︕ 今までそこにいたのは、あんたにしか⾒えてなかったの︕

真也︓充、は、死んだ……嘘だ︕嘘だ嘘だ嘘だ︕

   あぁあ、でも。

皐⽉︓真也……︖ 真也︓思い出した。充の、あの、写真――。

    充、みつる、みつるううううううあああああああ︕︕︕

皐⽉︓真也。⼤丈夫、⼤丈夫。

真也︓嫌だ︕充がいなくなるなんて、嫌だ︕3⼈⼀緒がいいんだ、ずっと3⼈⼀緒にいたかったんだよ…… ︕︕

皐⽉︓……うん、そうだね。私もずっと3⼈⼀緒がよかった……。

真也︓充じゃないとダメだ。皐⽉じゃないとダメなんだ。俺たちは、俺たちは……︕

皐⽉︓わかる、わかるよ。でもさ、このままじゃきっと、充も浮かばれない。私達も前に進めない。――乗り越えなきゃいけないんだよ。

真也︓……うう、皐⽉……︕

皐⽉︓真也。⼤丈夫。⼤丈夫だから、泣きなよ。

真也︓ううっ……ぐすっ……(泣きじゃくる)。

皐⽉︓(落ち着くのを待って)充の⾔う通りほんと泣き⾍なんだから……。

真也︓「いい歳こいてだっせぇ︕」とか、⾔われっかな。

皐⽉︓あは、⾔いそう。

真也︓――これも空想の充なんかな︖

皐⽉︓……私思うんだけど。 真也︓……︖

皐⽉︓私はあんまり幽霊とか魂とか信じてないけど、きっと充は私達のこと、⾒守ってると思わない︖

真也︓充が……。

皐⽉︓だから、たまに空想してやるぐらいがちょうどいいのかもね。

真也︓……じゃあさ皐⽉。付き合ってくれよ。

皐⽉︓なに︖ 

真也︓「3⼈」で宅飲み、しようぜ。

皐⽉︓たまにって⾔ったじゃん︕しょうがないヤツ︕

 

 

シーン6(エンディング)

 

真也、皐⽉の酔った笑い声

 

真也︓でさぁー、中学時代の体育祭︖充のやつハードルで派⼿にこけてたよな︕あれ今でも忘れられなくてさ︕

皐⽉︓わかるー︕私も覚えてる︕顔真っ⾚にして⾛ってたよね、あれは忘れらんないよ〜︕

⼀瞬の空⽩の間に

 

充 ︓幸せになれよ

 

 真也︓……皐⽉。

皐⽉︓なんでしょうか、⻑官っ︕

真也︓⻑官ってなんだよッ︕……俺さ、お前のことが――。

 

 

 

 

おしまい 

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